もしも時間が巻き戻せたら

例えば今の私が1年前に中味だけ戻ったとします。

更に、このとき私の肉体には今の私と一年前の私が混在しているとします。つまり、上書きによる消去や融合は考えずに、純粋に1年前の私の肉体に二人分の精神が同居している状態を考えてみます。

さて、この状態で1年と1日経過させ、1年前に戻るとします。そうすると、当然ながら最初に戻った時点の1日後に戻ってくることになります。このとき、二人分の私の精神が混在してるところに、二人分の私が書き足されると考えます。

この時点で私は4人分の精神を抱えることになります。つまり、下記の4パターンが考えられます。

  1. 現在から2回戻ってきた私
  2. 1.の私と1年と1日同居して1回戻ってきた私
  3. 現在から1年前に戻ってきて1日経過した私
  4. 3.の私と1日同居した私

さて、こんな風に私が「個人」から「集団」になってしまったとしたら、私はどうなってしまうのでしょうか?

2人なら、まだ「1年前の私」「1年後の私」と区別すれば良いかもしれません。4人でも何とかなるかもしれません。しかし、10回繰り返せば1024人、20回繰り返せば100万人ちょっと、30回も繰り返せば10億人ちょっとの私が一つの肉体に同居してしまいます。

…どうにも、「それが私だ」と言うには抵抗があるような気がします。恐らく私が「それが私だ」と認識できる限界というのは、私自身が随意に直接制御可能だと思っている範囲に限られるのでしょう。そういう意味では、今直接的に操作している筈の両手は私の範囲内ですし、間接的に操作するしかない(ように思える)キーボードは私ではありません。

とすれば、例えば仮に1024人の同居する私が居たとしても、私は無数の他人を抱えているだけなのでしょう。信じたいもの、都合の良いものを信じてるといえばそれまでかもしれませんが、素直な感覚ではこれが限界のようです。