世界を駆動するものは何だろう?

私的な結論を先に言ってしまえば世界自身なのだろうな と思います。

物理だの数学だのを動員して作られた法則の類なんてのは結局人間が謎仕様満載の世界システムを運用したり理解したり納得したりする為に世界に勝手に名前をつけて補助概念*1を導入してこれが多分世界のありようだ って勝手にやっているのだろうと。

世界は人間のそんな思惑とは無関係に世界自身のルールで動いているのでしょう きっと。勿論、そんな人間含めて世界な訳ですが。

そもそも、人間に限らず全ての知的生命体は(多分)世界そのものを理解する事は叶いませんしね…。

私達は知覚から情報を取り込んで世界を認識していますが、知覚から取り込んだ時点で既に世界に関する情報は世界そのものではありません。更に、取り込んだ知覚情報を元に世界を概念的に理解しますが、この時点で既にそれは元の近く情報の入力とも異なります。言ってしまえば私たちが認識しているのは世界の体系ではなく、世界を基にしたシミュラークラ*2の体系なのでしょう。

結局世界そのものに触れることは出来ない私たち人間が世界を理解する為に営々と積み上げてきた世界なるもののシミュラークラの体系が科学であったり哲学であったり信仰であったりするのでしょう*3

世界を解析するツールとして微分方程式やら行列やらで出来た物理法則も有効なツールとして役に立ってきたのは事実です*4。これからも役に立ち続けるでしょう。

しかし、還元主義的なアプローチはそろそろ限界が来ているような気がします。具体的に言えば、要素数が増えていったり問題が複雑化したときに対応が困難になる傾向があります。多体問題は有り触れているにもかかわらず数学的に解く事は不可能ですし…。

個人的に期待しているのがマルチエージェントシステムによるシミュレーションなのですが…まだまだ日が浅いのもあって明示的な評価基準がまだ無いのが現状だったりするのです…*5

取り敢えず、最後に皆様にこの本をお勧めしておきます。

「複雑系」を超えて―システムを永久進化させる9つの法則

「複雑系」を超えて―システムを永久進化させる9つの法則

複雑系創発システムに関する入門書です。事例報告も多く、特に学問的な背景知識も必要ないので割とオススメです。

*1:所謂法則や仮説の事である

*2:Simulacrum:幻影・擬制・見せ掛けの像のこと。ここでは世界の擬制のこと。

*3:無論、世界なるものを網羅する事は困難であるので、切り分けが発生する。これが学問分野である。また、シミュラークラの生成される基準による区分が科学や哲学や宗教を生み出した素地なのだと思う。

*4:情報量的に圧縮されているので、解析コストはかなり低いけれど、結局想定している範囲での「意外な事実」しか暴けないような気がする。予定調和であると言うべきかも知れない。

*5:具体的に言えば、評価や自分の嗜好する結果を導き出すのに有利なようにルールを設定しうる。