世界を埋め尽くす何かは記述可能か?

「それぞれが勝手に話を進めるの図」 - で、みちアキはどうするの?

勝手に覗き見して勝手に話を進めてみる。かつて世界を作ってみようと志したり、今もやっぱり諦めてなかったりする者としては語ってしかるべき話題だろう とも思いつつ乱入。


まず、論理の隙間に関して。

人間が用いる論理(と言うか記号系)は、そもそも以下の欠陥があります。ある意味では、これを論理の隙間と言ってしまえなくはないでしょう。

  1. そもそも記号と世界が一対一対応ではない
  2. 情報源から見て情報量が不可逆圧縮である
  3. 扱うのが人間である

以下に詳細を。

1.そもそも記号と世界が一対一対応ではない

記号とは世界を解釈する為に導入した概念です。その為人間が理解しやすいように色々な補助概念の山が築かれています。

例えばそれは色や境界の概念が挙げられるでしょう。これらは、本来的に存在しているかといわれれば、世界に存在している訳ではなくて人間が一方的に感じて認識しているだけの代物です。

記号で構築した論理世界とは、世界を網羅してもいないし世界にない概念を勝手に付加して勝手に構築して構成された世界に他なりません。

筆頭例の数学にしたって数の概念とか勝手に導入して「公理だ!」って言ってるので、本質的に記号を用いた論理の限界がその辺にあると考えて良いかもしれません。

2.情報源から見て情報量が不可逆圧縮である

さて、補助概念を用いてまで人間が理解に努めようとしている世界ですが、これはあまりに広大で膨大な情報量を持っています*1。そのまま取り入れたのでは人間の意識なんてあっという間に崩壊してしまうでしょう。

と言う訳で、人間は記号に幅を持たせてその幅に押し込むことで世界の要素を理解しています。この辺はクリオアとかの議論になるような気もするので詳細は端折りますが、人間が取り込んでいる時点で大分情報量が不可逆に圧縮されてますしそれを解釈して記号化した時点で相当量の情報が喪失されていると思ってよいでしょう。

人間に限らず有限の処理性能を持つ計算機械では、どうしても有限時間で問題を処理しなくてはならないので分解能に限界があります。これは人間の限界の問題もありますが、記号自体が情報を不可逆に圧縮してしまう性質があるのも事実です*2

と言う訳で、記号化はどうしてもどうしても可逆には行えないのです。そもそも記号になってる時点で世界のサブセットなのですから。

例えば「空気」と言った瞬間に、空気の個別性には目を瞑ることになりますし、それはどれだけ詳細に記述したところで類似する何かと区別することは出来ないのです。寧ろ、類似する何かが存在するからそれを空気と認識でき、区別された空気と認識できるのですから、記号化された全ては世界のサブセットでしかない と言わざるを得ないでしょう。

3.扱うのが人間である

人間の処理性能は、正直世界に比べれば圧倒的に低性能です。

全てを記憶できるならそもそも文字なんて発明しませんでしたし、全てを認識できるなら演繹法なんて発明しませんでしたし、全てを演算できるなら計算機なんて発明されなかったでしょう。

その程度には人間の処理性能は低いのです。

では何故処理性能の限界を認識することが難しいかと言えば、人間の体には処理性能の低さを隠蔽する仕掛けが多数用意されていたり、営々と人間が積み上げてきた努力により処理性能の低さから発生する問題を隠蔽・低減することが可能になっていたりするからなのです。

弱くて頭悪いから必死に問題回避した結果、今の文明があるのですから。

人間はいくら無限ループに陥る問題を与えられたところでハングアップしないですが、それは人間が特別高い処理性能を持っているからというより、無限ループに陥る可能性のある思考を何処かで止める機構を内部的に持っているからなのです。決して人間が特殊な存在だからではありません。

こんな存在が世界そのものを扱える訳もなく、同時に世界自体全てを知りうるわけはないのです。何せ圧倒的に低スペックなのですから。




さて、話をやっとアカシックレコードに移しましょう。

まず、この世界自体のアカシックレコードは、この世界自体であると言えます。全てを記述した存在があるとすれば、それは全て自身でしかないからです。残念ながら記号化された時点で情報は不可逆に圧縮されますし、全てを記号で表現したものについての情報は全てが持たなくてはならず情報量が無限に発散してしまうでしょう。

と言う訳で世界が例え有限の要素で出来ているとしても、世界内に佇んでる私たちには全てを知ることは出来ません。

では世界のサブセットなら、或いは模造品ならいけないか? とここ数年考えているのですが…恐らくこれなら可能なのではないかと思います。無論、世界を移しこむことは原理的に全てを移しこまなくてはならないので不可能なのですが、次の仮定を導入すれば巧くやればよく似たサブセットを限定条件で再現できるかもしれません。

  1. 世界は有限要素で構成されている
  2. 世界は有限要素の有限の相互作用で成り立つ

上記の仮定なら、有限の要素を有限パターンの相互作用を与えて追跡すればよくなります。これなら人間では発狂してしまいますが例えば計算機に記述してやれば世界を生成して観測することは出来るかもしれません。所詮紛い物ではありますが。

…と、多分部分存在的に論理上存在は否定できないアカシックレコードですが、人間が神になることはどうもできなさそうです。何せ人間の思いつくことは可能な行動全ての集合の一部なのですから。まぁ、この辺はかなりどうでも良いことです。先ずは作ってみてから考えればいいのですから。

私個人は上記仮定の下で世界がサブセットとは言え生成できるんじゃないかな と信じている人種なので、信仰の下に信仰を実現する為今後もだらだらと研究していこうかな と思ってます。

*1:例えば大気中の分子の運動などを考えてみるとよい。全部を追跡とか絶対に無理だろう。

*2:…と言うか全てを認識できる訳でも全てを記憶できる訳でもない人間が限られた資源の中でなるべく多くの情報を得るために生み出されたのが記号なのだから、無数を有限に押し込める作用が記号にはあって当然だったりはするが。