痛々しい作品を作る10か条

社会復帰へのリハビリついでに文章をだらだらと書き始めたので、製作メモ的なものとして個人的な禁じ手を列挙してみる。話の進め方と文章作法が混在しているが気にしてはならない。相変わらず非常に長いので、続きを読む仕様に。


1.話の主人公は話の開始時点では何も知らない

主にファンタジー的な世界観や伝奇系の話でありがちな設定。何故主人公が無知でなければならないかと言えば、狂言回しがやりやすいからに他ならない。この為、此処で言う無知 と言うのは世界観や舞台に対して無知であると言う意味合いになる。例えばファンタジーな世界観では私たちの世界に非常に近しい異世界からの来訪者が主人公になったりするのもこの為である。

無知な主人公に舞台や世界観について講釈するパートを導入部に入れることで話を理解しやすくするのが目的なのだろうけれど、得てして説明パートの作りこみが甘くなりがちなので控えた方が良い。特に伝奇系では何も知らない巻き込まれただけの一般人が物語の中心に居ることが多い*1が、説明その他が不自然になりやすい。また、それを解決する為に非常に無茶な話の展開になり易い。

2.ヒロインは秘密持ちで主人公を巻き込む

伝奇系に於けるboy meets girlの基本形。1.で主人公が話へと導入する取っ掛かりを満たす必要から、必然的にヒロインが異世界/非日常への案内役となるパターン。

定型だけに安定して読めるものの、話の要請から主人公/ヒロインの性格や行動指針が定型化されやすくマンネリ化しがち。

3.突然陰謀や黒幕の策動に巻き込まれる

1.などの理由より主人公はそもそも話の中心でないため、何者かが話を動かす必要がある。このため良く用いられるのが黒幕(単独とは限らない)の暗躍による陰謀への巻き込みである。

陰謀から逃れるため黒幕を倒す という定型に持ち込むことが簡単に出来るお手軽な仕様である。一般に策略や陰謀を用いる人物は黒幕的人物は好意的に解釈されないため、黒幕を打ち倒すことへのカタルシスを付与する要因ともなる。但し、黒幕が無意味に万能化したり話の都合のために不自然な行動を取ったりするようになりがちなので検討が必要。

4.特に不必要な場面で小難しい単語が飛び交う

衒学趣味の発露。これは具体的には単純な語彙を敢えて漢語調の堅い言い回しにしてみたり、特定の教養を背景にした発言を連発したりしている場合が挙げられるだろう。衒学趣味自体は特に推奨も忌避もしないが、趣味の発露も必要性と相応しさを勘案に入れるべきだと考える。

5.後半の謎解きのための安易な記憶喪失

物語の中核に失われた自分の記憶探しを持ち出すパターン。その失われた記憶との柵で主人公は物語の中核に居座ることになる と書けばマンネリも良い所。また、記憶喪失に関する理解が浅いまま物語に利用するため不自然だったり都合が良すぎたりする描写が非常に多くなる危険性も高い。

安易な記憶喪失の濫用は控えるべきだろう。

6.不必要に凝った固有名詞/動詞

物語の独自性を打ち出すために独自設定の単語を連発する。これは物語に本当に必要な設定であるかを吟味する必要がある。世間一般では突拍子もない略称や名称がつかないことを考えれば、不自然な創作単語の連発は世界観の基盤を怪しいものにしかねないので控えるべきである。

また、動詞を一般的な動詞で代用可能な動作を固有化動詞で表現するのも、導入部の敷居を高くすることが多いので推奨できない。

7.変なルビ/伏字

字面と伏字が乖離しすぎなものは濫用すべきではない。また、不自然な伏字も控えるべきである。何故かといえば、どちらも違和感しか産まないからである。前者は作中の世界における単語の扱いの不自然さを露呈させるし、後者は伏せる単語/文字の選択が物語を記述する作者の都合で恣意的に扱われることが多いため不自然な伏せ方になりがちだからである。

8.「――」や傍点が多い

―(ダッシュ記号)は間の表現に用いる。傍点は強調記号として用いる。どちらも強調が目的であるので、全体を強調してしまっては強調の意味がない。強調されるべき間やフレーズは何であるかを吟味せずに濫用するのは危険である。

9.特異な 異様な といった表現を連発する割に一般的

単語の意味と作中で一般的に扱われているようでは、いくら文中で特異/異様と記述したところで異様にも特異にも見えない。このような表現が文中に出されるにはある程度の必要性が必要なので無意味に連発してはならない。

10.主人公一行は力押しで物事を解決する

自分の正義を叫んで力業どーん。話の積み上げを根本からひっくり返すことが多く、今まで話を進めてきたのは何だったのだ となりやすい。仮に、じゃんけんのルールを延々説明された挙句名前も聞いたこともないゲームに付き合わされ、挙句ルール不明なまま負け、勝った勝ったと騒がれて不快でないなら止めないが…*2

*1:これは読者に近しい人物を主役に据えることで主人公への感情移入や共感を容易にしたいという目論見もあるだろう。

*2:まぁ、不快でない例もあるかもしれない。しかしそれは恐らく不快でない理由の原因はその説明やゲームとは無関係だろう。